後期研修医ブログ

精神保健指定医取得に向けて

 ブログ読者の皆さん、こんにちは。私は3年目後期研修医で、このブログには久しぶりの参加となります。旭川圭泉会病院研修医ブログも後期研修医5名の持ち回りで開始2年を経過し、多種多様な話題を各研修医の個性ある文体で綴り繋がれて、徐々に各方面からの反響、手応えを感じるようになりました。しかも精神科研修に関心のある人のみならず、看護やリハビリ、障害者福祉に携わる方ほか、一般市民の方々なども御覧になっているようで、ブログ当事者としても大変な励みとなります。今後ともご愛読方々、あわせて内容につき、忌憚のないご意見を頂戴いただければ幸いです。

  さて、今回は後期研修の一つの大きな目標として現在私が取り組んでいる、精神保健指定医取得のレポート作成について簡単に触れてみます。

  精神科入院医療にて他科と異なる点の一つに、「非自発的入院」の制度があります。
通常の身体科入院にあたっては、患者さんの入院治療意志による「任意入院」となり、退院についても患者さんの退院希望があれば原則その意志に従って退院をさせなければいけません。もちろん精神科入院においてもこの任意入院という入院形態での入院はありますが、当院における入院形態の多くは実は任意入院ではなく、「医療保護入院」という精神保健福祉法による患者さんの意志に拠らない非自発的入院によるものであり、入院にあたっては精神保健指定医の診察判断が必ず必要となります。
  すなわち、精神科病院の管理者は、幻覚妄想状態や著しい精神運動興奮状態などの入院加療を要する精神症状がありかつ病識に乏しい患者さんについて、入院治療への一貫した理解と同意が得られずとも、指定医が診察をした結果、医療及び保護の為入院の必要性が認められ、かつ精神保健福祉法が規定する保護者(配偶者、後見人又は保佐人、親権を行う者及び扶養義務者)の同意があるときは、患者さんを入院させることができる医療保護入院という入院形態で患者さんを入院させることになります。
  この一連の診察と判断は、単に精神科を標榜する医師によってだけでは行うことができず、精神保健指定医の資格を持つ医師に依らねば入院は法的に認められません。そして精神保健福祉法に基づく医療保護入院であるという告知は、必ず指定医により文書及び口頭でなされることになります。また警察官通報等で都道府県知事より指定医に診察命令が下され、その診察の結果、精神障害者であり、かつその精神障害のために入院させなければ自傷または他害の恐れがあると診察をした指定医が認めた場合は、知事による入院措置がとられることになります。この場合、精神保健指定医2名の診察結果が要措置と一致した場合は、保健所職員の書面と口頭の告知後に「措置入院」となります。いわゆる都道府県知事による入院措置です。
  入院後においても患者の症状からみて、本人または周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く、他の方法ではその危険回避が著しく困難と指定医が判断した時は「患者の隔離」を、また自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合や多動又は不穏が顕著である場合には、患者の隔離より強い行動制限である「身体的拘束」を代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として、精神保健指定医の診察の結果行う場合があります。更に通信・面会、及び信書に関する事項についての精神福祉法による規定と入院中の諸権利等の説明についても指定医が説明してその内容を診療録に記載することが求められます。このように精神科入院医療においては精神保健指定医の資格は事実上必須といえます。

  以上法の条文に基づいての解説は、一般の方々にはわかりづらい内容が多いと思いますが、現在私は当院の後期精神科臨床研修にてこの法律にのっとった適正な精神科入院医療のあり方を実地に学びながら、少しずつこの条文の内容、解釈の仕方がわかるようになってきました。尚、前記条文解説の詳細については、中央法規で出版されている精神保健福祉法詳解をご参照ください。

  これからも多様な精神症状の患者さんの入院治療にできるだけ速やかに応じるためには、豊富な精神科臨床経験のみならず、精神保健指定医資格は是非とも必要であり、また精神医療の趨勢として今後指定医でなければ関われない医療や、資格がなければ入院医療において色々と不利な面が増えてくるものと思われます。
  このため、指定取得に向けての症例経験と指定医申請に必要なレポート作成をいかに早期に確実に完成させるかが後期研修の重要なキーポイントとなるかと思います。この精神保健指定医資格取得が後期研修医のひとつの大きな目標となるわけで、現在の私の重要な努力目標でもあります。

  ちなみに当院では3年間の研修後早期に指定医取得が可能です。
  その理由としては
1、 指定レポートとして適切な8症例(措置入院1例、統合失調症圏2例、躁うつ病圏1例、中毒性精神障害・依存症1例、児童・思春期精神障害1例,症状性又は器質性精神障害1例、老年期認知症1例)を通常1年から2年の研修の間で、指定医の指導のもとに当院入院症例のみで経験できること。特に措置症例や児童思春期症例を複数症例経験することが可能です。
2、 経験豊富な複数の指導指定医がいること。レポート作成は要件が厳しく、必ず2000字以内にまとめ、レポート内容については精神保健福祉法と指定医の法的権限、条文内容の理解が正しく記載されているか、また精神科症例報告として症状と治療及び退院後のデイケアや各種サポートも含めた精神科治療の記載を、紋切りでない自らの言葉で、簡潔明瞭に記載されているかがレポートの合否の要点になります。この記載の在り方については、症例毎でかなりバリエーションがあるため、具体的なレポート文面についてはそれぞれ指導医のこまかなアドバイスを受けて作成してゆくことになります。指定医取得の実際を知りたい方は、当院研修開始後、直江院長、及びここ数年の間に合格した指定医の先生より、懇切丁寧な臨床指導とレポート作成指導、及びレポート添削を受けることで実地に学んでいってみてください。

  今回は研修のなかでの、指定医取得に向けた取り組みの一端を、現在レポート作成準備に励む後期研修医よりお伝えしました。